2024年 03月 17日
理由のない野心 |
(散歩途中の道で)
一年近く前から、Duolingoのドイツ語版で
スペイン語を練習している。これは
無料(または有料)で外国語を学べるアプリ。
手軽に気軽にいつでもちょっと
またはたくさん練習できるのが長所。
でも、現実的、真実味がないような、
文法的にだけ正しい文もよく登場する。
つまりは
いかにもA Iで作られた感がしばしばある。
それでも言葉を繰り返し読み、聞き、
書き、時には喋る練習を通して、
記憶力がほとんど消え去った私の頭にも
言葉の少しは残るから不思議。
始めた頃はまったく気にも留めなかったけれど
Duolingoにはリーグというのがある。
学習量(成績や能力ではなくてひたすら学習量)を示す
XP(experience points)という点数に応じて
10段階のリーグがあって、
一番下のブロンズから始まる。
そして学習量に応じて得られる点数に応じて、
リーグ内のランクが上がってきて、
一週間の終わりに先頭のリーグの最高5位以内に入ると
次の段階のリーグに昇進できるらしい。
一つのリーグ内のメンバーはコンピュータがランダムに選ぶし
そもそも参加者は匿名(ハンドルネーム)だから
競争相手はお互いに知らない同士。
私は長い間、このリーグの存在を無視していた。
というかなんなのかも知らなかった。
時々、「あなたはxxリーグに昇格しました」とか
「このままでいくと下位10以内に落ちて
下のリーグに降格します。練習しましょう」
という知らせをもらっても
何も感じなかったし、練習もしなかった。
昇格の意味や昇格の仕方にも関心がなかった。
市の市民大学で同じスペイン語講座を受けている
86歳の女性、イングリットさんも
自宅でデュオリンゴをしている(有料タイプ)。
彼女が「私はダイアモンドリーグの2位になった」
とちょっと自慢そうに話してくれた時も
「フーン」と答えただけで何も感じなかった。
彼女は毎日、2時間もデュオリンゴで練習するそうだ。
市民大学でも答えは完璧。
ところが最近になって気がついた。
私は今、なんとかなんとかというリーグにいて、
このなんとかなんとかの次のリーグは
最高リーグであるダイアモンドだということに。
ここまでの昇格を私は無意識、知らず知らずに
してきたらしい。
これに気がついてからは、
練習中にちょくちょく自分のランクを見るようになった。
驚いたことに、一昨日はたまたま、
私はこのなんとかかんとかリーグの
上から5番目と4番目をウロウロしていた。
念のためにもう一度書くけれど、
ランクは習っている言語の能力には関係がなくて、
ひたすら練習量(XP)で決まる。
このアプリを使って練習すればするほど、
つまり無料の場合にはつきまとう
宣伝ビデオを見れば見るほど
XPが増えてランクが上がり、
上のリーグに昇格できる。
昇格できたからって、自慢する相手はいない。
このアプリで学んでいる世界中の人は、
顔も見えないし、話もしないので、
競争相手とは言えない存在だ。昇格で
お金やプレゼントがもらえるわけでもない。
だから、ランク付やリーグ昇格への努力は
全く精神的にも物質的にも
動機(モチベーション)にはなれないように思える。
それなのに、それなのに、
気がついてみたら、私は自分が理解できない
野心だか競争心を持ってしまったらしい。
「あなたはさっきまで上から3位でしたが
マックスが追い上げて、4位に戻りました。
練習をして3位を取り戻しましょう」
などという余計なメールが来ると、
ついアプリを開いて練習してしまう。
マックスを知っているわけでもないのに
マックスに負けてはならじと。
この「競争心」はどこから来るのだろう。
この「野心」は誰に対して、何に対してのだろう。
ゲーム会社に対してでもないし、
同じリーグにA Iで配分された他の参加者でもない。
自分に対する野心なのかな。
自分で自分が分析できない。
理由もなく、しゃかりきになって
今のリーグの3位を維持しようとする
自分がとても滑稽にも思える。
この野心のせいでこのブログを書く作業も
延期した。
このブログの方が、匿名とは言っても、
お互いの生活や状況がある程度、見えるから
デュオリンゴよりは読者どうしを知っているのに、
それを犠牲にしてでも
匿名相手の競争をしている私の野心は
どこから来るのか。
今日は日曜日なので、一週間のセッションの終わり。
あと数時間で今週のXPに応じてランクが決まり
上から5位のゲーマーは上のリーグに昇格する。
リーグシステムのメリットとしては
モチベーションにつながり、
練習量が増えるとされている。
確かにその狙いは当たっているらしい。
それでも不思議だ。
競争相手が見えないのに、
知らず知らずに競争してしまう、
という心理状態が。
#
by Solar18
| 2024-03-17 23:51
| 人間関係
|
Trackback
|
Comments(2)